独創的な表現力に鳥肌が立つバレエ漫画『昴(スバル)』

独創的な表現力に鳥肌が立つバレエ漫画『昴(スバル)』

目頭を熱くさせる!

独創的な表現力に鳥肌が立つバレエ漫画『昴(スバル)』

『ビッグコミックスピリッツ』で連載されていた曽田正人先生のバレエ漫画『昴(スバル)』。主人公の宮本昴(みやもとすばる)が、双子の弟である和馬(かずま)の死により挫折し波乱の人生を歩みながらも、バレエの為に自分の全てを捧げ栄光を手にしていく物語。その栄光と挫折の細かい内面描写や、複雑な表情の描き方、ダンスシーンの圧倒的な迫力と表現力が連載終了から現在に至るまで、熱狂的な支持を得ている理由なのではないでしょうか。 今回は、まだ読んでいない方も既に読み終えている方も必見の、『昴』が絶対に読みたくなる魅力をお伝えしていきたいと思います。

 

あらすじ

小学生時代―。宮本昴の双子の弟・和馬が、ある日突然『脳腫瘍』を患ってしまう。日に日に、やつれ記憶が曖昧になっていく和馬の姿を見て、昴は和馬が死んでしまうかもしれない恐怖と闘いながら、和馬の為に自分を捨てて記憶を回復させようと決心する。

意識が朦朧としている和馬に少しでも笑ってもらえるように、朝食で食べた魚のマネを大げさにしたり、二人の一番大切な思い出である、家で飼えずに捨ててしまった黒ネコのマネをした『黒ネコのダンス』を全力で披露してゆく。

しばらく経ったある日、昴は同級生の呉羽真奈(クレハマナ)が通っているバレエ教室へ誘われついて行くことに。始めは乗り気ではなかったが、レッスンを受けていくうちに踊ることの楽しさを見出す。

その一方で病室では和馬の容態が急激に悪化し、死期が間近まで迫っていた。その事実を知らずに、昴は母親にバレエ教室へ通いたいと願い出るが、母親から「和馬はやりたいことが出来ないのに可哀想だと思わないのか」と言われ、自分の初めてのわがままを全否定された昴は感情的になってしまい「かずまなんかいなきゃいいんだっ‼」と、和馬の目の前で叫んでしまう。哀しそうな視線を向ける和馬に気づいた昴は、自分の犯してしまった過ちを深く後悔する。

翌日、和馬は危篤状態に。昴は自分の発言が原因で容態が悪化してしまったんだと責任を感じてしまう。和馬に対して謝りたいがどうしたら伝えることが出来るか分からずにいると、真奈がバレエの『ジゼル』を和馬の前で踊ることを提案し、一緒に練習する。練習を終え病室へ向かう昴を待っていたのは、死んでしまった和馬と泣き崩れる看護婦達の姿だった。

死に目に間に合わなかった昴は自分の気持ちに整理がつかず、壊れたように泣き狂う。父親はそんな状態の昴に対して、和馬が残した最期の言葉を告げる。「すばるちゃんごめんね。」その言葉が、極限状態の昴をさらに追い込んでしまい、自分の中の何かがブチブチとちぎれていった。

途方に暮れフラフラと歩いていると、目の前に一匹の黒ネコが現れる。ネコの後について行くと『パレ・ガルニエ』というキャバレーに辿り着く。そこで元バレエダンサー日比野五十鈴(ヒビノイスズ)と出会う。この出会いが昴のバレエ人生を大きく変えることになり、ここからバレエ界にどっぷりと浸かってゆく。

不遇な環境が普通の女の子を天才へと覚醒させた

あらすじで、この『昴』のもっとも核となる幼少期の部分をあえて書かせていただきました。なぜならば、この時の出来事が昴の物語の基盤であり、良くも悪くも最後までへばりついてくるのです。

昴は普通の小学生でした。普通に笑い、普通に泣く、ただの子供だったのです。しかし和馬の前で死と隣り合わせのパフォーマンスをしたことにより、屈強な精神力と研ぎ澄まされた集中力が身につき、どんな舞台に立っても和馬の前で踊った時より簡単だと思うことで乗り越えてゆくのです。この強さが昴というキャラクターの魅力であり、常人を逸脱した領域のダンスを生み出す核となっています。

表情の描き方が秀逸すぎて主人公の魅力に最後まで引き込まれる

『昴』は15歳ながら最強のバレエダンサーとして、どんな境遇でも自分の力で乗り越えます。だけれど、そんな強さを持っていてもやはり15歳なんです。だから沢山泣きますし、凄く素敵な笑顔で笑いますし、感情が豊かです。

そうかと思えば演技中はとても艶っぽく、15歳とは思えない。天才と少女の両面を持っている魔性のキャラクターなんです。その表情の一つ一つが曽田先生の高い画力で細かく描かれており、昴というキャラクターにぐぅ~っと引き込まれてゆきます。故に最初から最後まで昴の表情から目が離せなくなります。

圧倒的な表現力のダンスシーンと常軌を逸脱したセリフで目頭が熱くなる

初舞台の白鳥の湖でのコール・ド・バレエやローザンヌ国際バレエコンクール、刑務所での慰問公演、マンハッタンでのボレロ公演などダンスシーンは沢山ありますが、私が特に印象的だったのはローザンヌ国際バレエコンクールでの演技です。

決勝で昴は高熱を出しフワフワした状態になってしまうのですが、その状態を「生まれてから最高のコンディション」だと言うんです。なぜなら熱で浮かされた状態だと重力をあまり感じなくなり身体の重さが気にならなくなるのだと。

そのままの状態で舞台に上がるのですが、そこからが凄いんです。熱があることなど微塵も感じさせず、無重力の中で踊っているような錯覚を観客に起こさせるんです。消え入りそうなくらい美しい演技で観客を沸かせ、舞台からはけると重さが戻りぐだっと倒れこんでしまいます。

利用出来るものは全て使って想像を絶する最高のパフォーマンスをする。これこそプロであり、一般の感覚と違う天才的な発想に圧倒されてしまいます。

『昴』まとめ

昴愛が強すぎて、まだまだ紹介し足りない場面が沢山あります。全11巻ですが、とても読み応えのある作品で、時間も忘れてアッという間に読み終えてしまいます。

私は『昴』を読むまでバレエのことは何も分かりませんでしたが、今ではテレビでコンクールなどがやっているとついつい観てしまうくらい好きになりました。それとバレエを小さいころから20年くらいやっていた友人にも勧めて本を貸したのですが、大好評で未だに返してくれません。嬉しいような悲しいような複雑な気持ちです。

気になったという方は是非とも漫画購入して読んでみてください。そしてここでは紹介しておりませんが『昴』を読み終えた方は、是非とも『昴』第2シーズンの『MOON』も読んでみてください。何度読み返しても熱くなれる不朽の名作です。