対話で紡がれるストーリー『僕と君の大切な話』

対話で紡がれるストーリー『僕と君の大切な話』

言葉があるから、あなたを理解できる

対話で紡がれるストーリー『僕と君の大切な話』

「僕と君の大切な話」は、主人公の「相沢のぞみ」が思いを寄せる「東司郎」と対話でお互いを理解していく物語です。 通常の少女漫画であれば、主人公とパートナーの出会いがあり、何らかの事件があり、周囲の思惑に苦しめられながらも恋を成就させていくのがセオリーとされています。 しかし、この漫画は「ひたすら会話」のみで物語が進んでいきます。 「どうして男は戦いが好きなのかしら」「なぜ女は男の行動にダメ出しをするのか」などなど、異性の違いをテーマにした会話が淡々と繰り広げられるのです。 同じ国に生まれ、同じ時代を生きているのに私たちは「異性」についてどれだけ理解しているでしょう? 普段何気なく流してしまう異性の行動、その真意を「僕と君の大切な時間」で読み解いてみましょう。

 

「男女は分かり合えないのか」

 「弟の漫画を読んだのだけど、どれもこれも戦ってばかりだったわ」
 「なぜ男は戦うの、その先に何があるの」
 「少女漫画だって似たようなものじゃないか、古今東西男女の色恋沙汰だ」

 
確かに少年漫画といえば「ジャン●」「マガジ●」「サンデ●」などなど、基本的に戦ってますよね。常に主人公の実力を上回る敵が現れ、修行をして突破するのを完結まで続けるものが多いです。

一般化するとワンパターンですが、それぞれの作品で世界観、魅せる絵、演出で作者の個性が光ります。だから、同じ流れでも人は飽きずに様々な少年漫画を読めるのでしょう。

ワンパターンなのは少女漫画も同じですよね。

主人公とパートナーの出会い、両思いだけどすれ違って付き合えない、何らかの事件でお互いの思いを知る、ゴールイン。という「お決まりの流れ」があります。修行や倒すべき敵のようなものは存在しませんが、中にはサスペンスばりの心理描写がある漫画もあります。

このように、男性向けは「肉体戦、レベルアップ、勧善懲悪」を描くことが好まれ女性向けは「心理戦、周りとの調和」を描くことが多いです。漫画の演出からも異性の違いが見えるのは面白いですね。

冷静さか厳しさか

「女はどうしてこんなに弱いのかしら、人は恋をすると弱くなるの・・・?」
「自分に甘いんじゃないか」

のぞみはこの男のどこが好きなのでしょう。他人の問いかけに対してこんなバッサリ切っちゃうなんて、ひどすぎます。「戦争と平和」とか高尚な本を読んでいるなら、もっと会話を続けてほしいものです。

さらにバッサリ切った上に

 「大体、僕は理性的な女というものを見たことがない、やせたいと言いながらお菓子を食う、「ごめんねー」と言いながら長電話をする」
 「すべて、それでいいと自分を甘やかしているからだ。そして、そんな自分を受容すべきと他人にも強要しているのだ」

と痛烈な事実を述べる。これは冷静すぎる見解ですね。私は女子大出身なのですが、このセリフの情景に関しては、「100万回見た」と言っても過言ではないです。ぐうの音もでない事実。厳しい正論です。 
 

二人が言葉を紡ぐ理由

 「例えば僕と君が違う星の人間だとして それをつなぐのは言葉だろう
  だったら こちらから閉ざしてしまうのは あまりにももったいない」

厳しく冷静な東くん。のぞみの問いかけに対して時に辛辣な、けれど時に優しい答えを言葉にします。

私たちは他人とコミュニケーションを取る時に「言葉」を介します。コミュニケーションは、「言葉を伝える人」と「言葉を受け取る人」の2人がいて初めて成り立つものです。

男性と女性は様々な場面で異なる体験をしています。体格も違うし、男性グループで話題になるテーマと女性グループでのテーマは異なるでしょう。異性で嗜好が異なっても、「言葉」を介することで、お互いを「理解」できます。

「それに、相沢さんとの会話は あまりに自分と違ってなんだか面白い」

のぞみが「なぜ自分の話に付き合ってくれるのか」と尋ねたときに上記のセリフを伝えます。東君は、時折優しい言葉もくれるのです。

淡々と続く2人の対話も面白いのですが、恋人という関係になると現状から変化が生まれるのでしょうか。

興味があるから問いが生まれる

女子高生の「相沢のぞみ」と男子高校生の「東司郎」、この2人の会話によって物語が進んでいく「僕と君の大切な話」。

2人の話すテーマは「男女の違い」です。「少女漫画と少年漫画」「理想のパートナー」など日常に溢れる題材について、問いを出しお互いの意見を述べていきます。お互いの意見が異なっても、「どうしてその結論に至ったのか」を常に確認し、理解を深めていく2人の様子は読んでいて微笑ましいです。

「関心」がなければ「問い」は生まれません。2人の対話で物語は進んでいくのですが、「対話が続くこと」は2人がお互いについて「関心がある」ということを示しているのです。

異性について理解したい人も、自分の性を客観視したい人も「僕と君の大切な時間」で理解を深めてみませんか。

 
(ライター名:ユカノ@)