世界を憎む青年が大人へと成長していく大傑作『惑星のさみだれ』

世界を憎む青年が大人へと成長していく大傑作『惑星のさみだれ』

泣けます!とにかく泣けます!!

世界を憎む青年が大人へと成長していく大傑作『惑星のさみだれ』

皆さんは「惑星(ほし)のさみだれ」という漫画をご存じでしょうか? 水上悟志が連載していたヤングキングアワーズ(少年画報社)で2006年の5月号から始まり、2010年10月号まで連載されていた漫画作品です。 「惑星のさみだれ」の刊行巻数は全10巻と手に取りやすい部類に入ると思います。 この作品はインターネットで「お勧めのマイナー漫画を挙げて欲しいなど」の話題には必ずと言っていいほど名前が挙げられる作品です。 この作品が連載していたのは2010年。連載が終了してから既にかなりの時間が経過しています。 それでもなお、本作品は読者達の心を掴んで離さないのはなぜか? 今回は皆さんに極力ネタバレはしない方向でこの作品の魅力を伝えていこうと思います。

 

「惑星のさみだれ」のあらすじ

泥人形と呼ばれる化け物や惑星を砕く巨大な大槌「ビスケットハンマー」を使い地球を壊そうとする悪の魔法使いと、姫と獣の騎士団が地球の存亡を巡って戦うバトル漫画です。

ただ、「惑星のさみだれ」では魔法使いと戦う一方で、地球を守る側の姫は地球を壊そうと画策しています。姫は騎士団のリーダーでありながら、惑星を砕く魔王でもあったのです。

姫が地球を壊そうとしていることを知っているのは、姫に忠誠を誓う主人公のみ。物語の表側で悪の魔法使いと地球の存亡をかけた戦いが進む一方で、物語の裏側では姫と主人公の地球を砕く物語が進行していきます。

登場人物

獣の騎士団の面々を始め、個性的で魅力的な人物が物語を彩ります。彼等の見せる熱いやりとりに胸を熱くされる方もいらっしゃるかもしれません。

ここでは「惑星のさみだれ」の主要登場人物である雨宮夕日と朝比奈さみだれについてご紹介します。

雨宮夕日

上の画像のキャラクターは主人公の雨宮夕日です。物語が始まったばかりの夕日は歪んだ考えを持っており、世界を憎んでいました。

彼が歪んでしまった原因は祖父の教えにあります。祖父は夕日に「人を信じるな」と教え込んだため、酷く歪んでしまったのです。彼は世界を憎んでいたので、当初は姫と魔法使いの戦いに参加することに消極的でした。しかし、あるとき夕日は魔法使いが作った泥人形に襲われ、死を覚悟します。泥人形の攻撃が迫る中、地球を守る姫・さみだれが夕日の命を救います。彼女は夕日の命を救うだけでなく、夕日の前で地球を砕くことを宣言。夕日はさみだれの迫力に呑まれ、忠誠を誓います。

当初はビスケットハンマーを救いとさえ思っていた彼も、さみだれや騎士団の面々と関わっていく内に大人へと成長していきます。世界を憎んでいた青年がどう変わっていくのか。この作品の見所の一つだと思います。

朝比奈さみだれ

彼女こそ地球を守る姫にして地球を砕こうとしている魔王です。関西弁で話し、明るい性格をした少女なのですが、魔王としての冷たい一面も併せ持っています。

彼女が地球を砕こうとしているのは「地球を永遠に自分のものにしたい」と思っているからです。彼女が地球を砕く理由は憎悪からではありません。世界を愛しているからこそ、彼女は世界が自分の掌から零れ落ちることを認めようとしないのです。彼女もまた夕日と関わっていくことで変化が生じていきます。

この二人が物語の最後にどんな結論を出すのか。是非、10巻まで読み進め、確認して頂きたいです。

「惑星のさみだれ」の魅力

泣けます。とにかく泣けます。そして、圧倒的に引き込まれます。特に最終刊の10巻は涙なしで読み進めることはできません。この作品がそれだけの感動を生んでいるのは、二つの要因が挙げられるでしょう。

  • 作品テーマである「子供と大人が成長していくこと」を丁寧に描ききったこと
  • 作者が計算して10巻に面白さのピークを持っていったこと

これについて、詳しく解説していきます。

この作品のテーマ「子供が大人へ成長していくこと」

惑星のさみだれのテーマは「子供から大人への成長」です。

上の画像のように、作中では随所に「大人とは何か?」という問いかけが度々なされます。この作品は子供の視点と大人の視点で描き、どちらかの一方通行で物語が進まないので、大人の格好良さが際立つのではないかと思います。

そういった描き方ができたのは主人公の雨宮夕日が大学生であり、子供と大人の中間地点に位置していたからです。

物語開始当初の夕日は自分のことしか見えていない子供側の人間でした。そんな夕日も獣の騎士団に在籍する大人達を見て、大人側の視点を身につけていきます。そして、獣の騎士団に在籍する子供達に「大人としての接し方」を実践していきます。

このテーマを一貫して掲げ続けたが故に10巻での感動に繋がったと思います。

計算されて描かれた物語の山場

「惑星のさみだれ」はかなり計算されて描かれた作品です。物語の全体を見通して描かれており、物語のピークは徐々に上がっていきます。中だるみなどなく、退屈になるなんてこともありません。物語はどんどん面白くなっていき、10巻の完結まで突っ走っていくのです。

上の画像は地球を守る姫・さみだれと獣の騎士団が集結した8巻表紙です。終盤は特に濃密な面白さを秘めており、頁を捲る手は止められません。

ただ逆にいえば一巻が面白さの絶頂ではないので、これがある意味唯一の欠点でもあります。この漫画は徐々に面白くなっていくタイプで、序盤はまだその面白さ全てが描写されていません。魅力的な個性を持った獣の騎士団の面々も一巻では全員登場していません。全員が出揃うのは三巻になります。

なので、この漫画の面白さを感じたいと思う方は一巻で止めず、最低でも三巻まで読まれるのをお勧めします。尤も、序盤もテンポが非常に良く、キャラクターの掛け合いも面白いので飽きさせません。

まとめ

2010年に連載が終わっても、読者の心を掴んで離さない名作「惑星のさみだれ」。高い評価を裏付けする密度の高い物語と、個性的なキャラクター達。読み進めていく内に魅力に取り憑かれ、頁を捲る手が止まらなくなりますよ。

現在は電子書籍で入手が可能なので、まとめ買いされるのも良いかもしれません。是非、あなたもご一読してみてはいかがでしょうか。