『信長のシェフ』のススメ

『信長のシェフ』のススメ

歴史とグルメの漫画

『信長のシェフ』のススメ

最近の漫画はマンネリ化して飽きてきたなー そう思ったことはありませんか? 私も十代の子供が活躍する漫画を見ても共感できない年齢になってきました。 ネットで面白いと評判の漫画を見ても、好みの物語でなかったこともあるかと思います。 そんな教養のある方が読んでも面白い漫画を紹介したいと思います。 いえ、これから紹介するのは、むしろ大人のほうが楽しめる漫画です。

 

~歴史と料理の漫画「信長のシェフ」~

皆さんは「信長のシェフ」という漫画をご存じですか?

西村ミツル・梶川卓郎による漫画で、芳文社の週刊漫画TIMESで隔週連載されています。

フランス料理人の葛城ケンが職場の仲間とともに戦国時代にタイムスリップし、優れた料理の才から信長に気に入られ、歴史に入り混じっていく————

このような物語です。

ドラマ化もされたので、聞き覚えもある方もいるのではないでしょうか。

漫画の目玉は「料理」と「歴史」

元公邸料理人として活躍されている西村ミツルさんが作中の料理を監修しているため、グルメ漫画としても完成度が高いです。

また、史実に語られる人物の好みの料理、味付けなどが作中で紹介されるため、歴史上の人物が何を好んで食べていたのか、当時の食事情はどのようなものであったのかを知ることができ、日本史が好きな方なら間違いなく楽しんで読むことができます。

例を挙げると、織田信長が好きな料理は味付けの濃い料理と甘いものです。

徳川家康が好きな料理は鯛の天ぷらだと言われています。

作中では、ケンは彼らにその料理を出して美味しいと喜ばれます。

ケンが用意する料理に、史実の人物が一喜一憂するのが、読んでいて非常に面白いのです。

史実に語られる人物が、生き生きと漫画の中で生活しています。

たとえば、信長の側近である森可成が死んだとき、信長は感情を表に出さず、部下からは冷徹な人間だと思われます。

その時にケンが弔いの料理を出し、信長は涙を流しました。

史実の人物が、タイムスリップしてきたケンに影響されていくのが面白いです。

タイムスリップの際に主人公のケンは記憶をなくしますが、日本史や世界史などは憶えています。

そのため、仕えている信長が明智光秀に殺されてしまうことも知っています。

部外者である自分が歴史を変えていいのか、関わってしまっていいのか————

そのようなケンの苦悩も作中では大きなポイントとなっています。

葛城ケンという人物は、最近の漫画ではあまり登場しないタイプの人間です。

現代の日本で料理人としてのキャリアを積み、京都の一流ホテルで副料理長として勤めていました。

分別ある大人として責任感が強く、生真面目に戦国時代を生きていきます。

そのため、読者としては素直にケンを応援して、物語を読み進めることができます。

爽快に読める理由がもう一つあります。

ケンのスペックの高さです。

例を挙げてみると、

  • 推定百キロの鉄なべを背負い、戦国時代の兵とともに行軍をする(しかも足軽と同じ装備もしてる)

  • ナツメグの殻を素手で割る(人差し指と中指でクルミ並みの硬さをパキッて割る)

  • 一人で3000人の軍を足止めする(秀吉からもケンはおかしいって言われてた)

  • 隠密として敵陣地に潜り込み、生還する(3,4回くらい…?)

などなど、ネットで話題になるほどの規格外のスペックを持った男がケンです。

こうして改めて確認すると、特殊部隊以上のスペックを持つ料理人です。

信長もケンに対して絶大の信頼を置いており、お前ならば最後までわしを裏切らぬか、とまで言わせています。

信長とケンの信頼関係も心地よいのです。

料理と、歴史、主人公のケン。

この三柱によって、信長のシェフは非常に面白い漫画となっています。

~3巻に掲載のエピソードの紹介~

この漫画の魅力をさらに伝えるために、私の好きなエピソードを紹介したいと思います。

ネタバレになってしまうので、嫌な方は読むのを辞めて信長のシェフを購入しましょう。

読んで気になった方も信長のシェフを購入しましょう。

第21話のエピソードです。

浅井長政に裏切られた信長は、その包囲網を突破するために模索します。

その足掛かりとして目を付けたのが美濃・近江国境にある鎌刃城でした。
岐阜から京都に通じる要路のある鎌刃城は、天下布武に重要な場所です。

鎌刃城の城主を調略し、信長軍に寝返らすようにケンは命じられました。

秀吉、竹中半兵衛、ケンの一行は任務のために鎌刃城に向かいます。

寝返りの条件に鎌刃城から出された問題が、「頭付きの骨のない魚」というものでした。

そして、この条件が満たされなければ隠密として処刑すると宣言します。

相手としては不可能な条件を出したのでしょうが、信長にはケンがいます。

ケンが出した料理は、フランス料理の巨星フェルナン・ポワンの料理、スズキのパイ包み焼きをモチーフにした、鯛のパイ包み焼です。


スズキのパイ包み焼き

相手の条件通り、骨のない頭付きの魚です。

この料理に城主は信長の軍門に下ろうとしますが、側近が待ったをかけます。

念のために用意させた魚の骨を取り出し、骨があったと言うのです。

あわや処刑となるケン一行ですが、ケンの一声で丸く収まります。

ケン曰く、

「その骨は川魚の骨で、我々の用意したものは海魚の骨だ。形状がまるで違う。その骨はそちらが用意した川魚の骨だ」

このように相手を説得し、鎌刃城の調略に成功しました。

しかし、ケンの話ははったりで、それを話した秀吉にはドン引きされていました。

失敗すれば死ぬという場面で、汗一つかかずにブラフをかけるのがケンという男です。

~自信を持って勧める漫画!~

このエピソードはケンの実力の一端です。

まだまだ信長のシェフには面白いエピソードが多くあります。

ここまで信長のシェフを紹介しましたが、この漫画の魅力が少しでも伝われば幸いです。

歴史×料理という、面白い要素しかない漫画です。

料理漫画や歴史漫画が好きな方、それ以外の方にもおすすめなので、ぜひ読んでみてください。