『へうげもの』

『へうげもの』

この歴史漫画が面白い!

『へうげもの』

「へうげもの」という漫画を聞いたことはあるでしょうか? アニメ化もされたので、一度は耳にされたこともあると思います。 戦国時代に天下一の大名茶人として名をはせた、古田織部を主人公とした歴史漫画です。 山田芳裕さんによって書かれた漫画で、25巻で完結しています。 この漫画がとにかく面白いのです。 今回は「へうげもの」の魅力について、紹介していきます。

 

歴史から見る面白さ

古田織部は大名として織田信長、豊臣秀吉、徳川家康と3人の天下人に仕えました。茶人の千利休の高弟であり、彼の死後は茶頭となり、実績と名実ともに天下一の茶人となります。

へうげものは、彼が一大名であったころから徳川家康に仕えるまでの生涯を描いた漫画です。戦国時代を主題に置いた歴史漫画は多くありますが、古田織部のような人物を描くものはありません。信長の顔を見飽きた読者にも、新鮮に面白く読むことができる漫画です。

へうげもののストーリーで主題となっていることは、「焼き物」と「ひょうげる」ことです。古田織部とは茶人としてだけでなく、茶器の制作や、建築・庭園の作庭などにも多大な影響を及ぼした人物です。古田織部の作風の茶器は織部焼きと呼ばれ、ゆがんだ形が特徴的です。皆さんも一度は目にしたことがあると思います。

黒織部/ロサンゼルス郡美術館蔵

引用元:コトバンク

なぜこのようなゆがんだ器ができたのか、疑問に思ったことはありませんか?このような形の器は世界的にも見られず、日本でも古田織部によって初めて開拓された作風です。

へうげものでは、古田織部がこの歪んだ形の茶器を作る過程が描かれており、茶器に興味がない方も興味を持ってしまうほど面白いです。明治時代の陶芸家、加藤唐九郎は「芸術としての陶器は古田織部から始まった」とまで言っています。

加藤唐九郎の言ったとおり、織部焼きのような歪んだ陶器が良いとされるのは古今東西を見てもまったく新しい価値観であったのです。漫画の古田織部は、その魅力を損なうことなく描かれています。

「ひょうげる」とは

主題のもう一つが「ひょうげる」ことだと書きました。ひょうげるとは、ふざける、おどけるといった意味の言葉です。このひょうげることが、古田織部にとって大切な価値観だったのです。

彼の師の千利休は「侘び寂び」を自分の生き方として、その価値観を日本に広めていきます。この価値観は、現在の日本人にも受け継がれていると思います。日本人の精神を構成しているものの中には間違いなく「侘び寂び」があり、千利休の偉大さを感じます。

対して古田織部は「ひょうげる」ことを自分の価値観として、世の中に広めたいと思ったのです。最上の甲よりも、どこかひょうげた乙な物事がいいと古田織部は思いました。その結果が、先ほどの画像のような織部焼きを作り上げました。

織部焼きを見ると、なんとなく楽しい気持ちがわいてくると思います。そのひょうげた価値観を古田織部は大切にしました。漫画の彼ものらりくらりとした性格で、歴史の荒波を越えていきます。

ストーリー展開も早く、織田信長から徳川家康までの時代を25巻で描いています。一巻の中身が濃密で、読んでいて飽きることがありません。

作中のフィクションと思うような出来事が史実であったりと、作者も歴史をよく研究して書いているのが分かり、日本史好きでも間違いなく楽しんで読むことができます。

キャラクターからみる面白さ

へうげものの魅力は古田織部だけでありません。他の歴史上の人物たちも、個性が際立っています。

戦国武将たち

彼の主君の織田信長も、豊臣秀吉も徳川家康も周りの人物も、非常に魅力的に描かれています。私は特に豊臣秀吉が好きで、作中のキーポイントとなる本能寺の変の出来事は衝撃的でした。

信長と秀吉の対話は感動せずにはいられません。史実と、作中のキャラクターの心情や状況が非常にうまく絡み合っており、漫画での出来事が史実でも本当に起こったのではないか、と錯覚してしまうほどキャラクターがよく描かれています。

師匠・千利休

作中人物の中でも、千利休は特に古田織部に大きな影響をあたえました。千利休も魅力的な人物で、彼は茶道をもって日本に新しい価値観を植え付けようと模索します。彼は、死を身近に感じるときに起こるような侘び寂びの感情を、至上の価値観だと思いました。

自身の目的のためなら知略謀略の限りを尽くして、帝すら暗殺しようとする狂気的な人物として描かれています。豊臣秀吉に仕えた千利休ですが、彼の侘び寂びの価値観と秀吉の煌びやかな趣味は対立し、次第に溝を深めていきますが、それも作中のターニングポイントとなります。

古田織部が主人公の漫画ですが、物語の主軸になっているのは「価値観の構築」で、それを中心に歴史をたどり、物語が進みます。そのため作中の人物の価値観がそれぞれ違い、全てのキャラクターが生きているかのように魅力的に映ります。

キャラクターもストーリーも本当に面白い漫画です。

自信を持って勧める漫画です!

歴史の漫画でも、古田織部と陶器というニッチなものが主題ですが、本当に面白いです。これほどキャラクターが魅力的な漫画はあまりありません。陶器に興味がない私も楽しく読めましたし、読んだ後は陶器に興味を覚えてしまいました。

日本史好きの方も、そうでない方にもこの漫画はおすすめです。是非読んでみてください。