アナタの深層心理を暴きます!『ミステリと言う勿れ』

アナタの深層心理を暴きます!『ミステリと言う勿れ』

「このマンガがすごい!2019」オンナ編2位

アナタの深層心理を暴きます!『ミステリと言う勿れ』

「月刊flowers」にてただいま連載中の、「BASARA」「7SEEDS」の田村由美先生による新感覚ミステリー漫画「ミステリと言う勿れ」。2019年1月現在、単行本3巻まで発刊されています。 宝島社「このマンガがすごい!2019」オンナ編2位に選ばれた、今、大注目の本作をどこが“新感覚”なのか、既存のミステリー漫画との違いを徹底分析していきたいと思います。

 

あらすじ

本作の主人公・久能整(くのう ととのう)は天然パーマがトレードマークの、どこにでもいそうな平凡な大学生。

「“冬はつとめて”(枕草子:冬は早朝がいいという意味)っていうほど早くないけど、うん、カレー日和だ」

小雪がちらつくベランダでそうつぶやく整をよそに、上空を飛ぶ2機のヘリコプターや緊急車両のサイレンと、外は何やら騒がしい。のんびりと自宅アパートで本人こだわりのカレーを作っていると、ピンポーンと呼び鈴が鳴るところから物語は始まります。

「大隣署の藪といいます、ちょっとお話を」

大家さんといっしょに訪ねて来たのは刑事でした。近所の公園で整と同じ大学に通う学生が遺体で見つかる事件があったので、話を聞きたいからと署まで同行するよう求められます。

普通、家に警察が訪ねて来たらやましいことが何もなくても動揺すると思いますが、整は飄々と刑事の求めに応じて警察署へ向かいます。“重要参考人”の疑いをかけられているとも知らずに…。

江戸川コナンでも金田一一(きんだいち はじめ)でもない新しいタイプの主人公

ミステリー漫画といえば「名探偵コナン」「金田一少年の事件簿」この2大タイトルを多くの方が思い浮かべると思います。本作もミステリー漫画という性質上、プロット(物語の筋、仕組み)自体は前述の2作品と大きな違いはありません。

唯一ハッキリと違うのは、ズバリ主人公です。この主人公が俗にいう正統派のキャラクターではなく、独特の雰囲気と空気感を持ち合わせています。

「名探偵コナン」の主人公・江戸川コナンの中身は、数々の事件を解決し警察から一目置かれた高校生探偵で、「金田一少年の事件簿」の主人公・金田一一は、名探偵・金田一耕助の孫であり祖父譲りの抜群の推理力を持つという、両キャラクターとも“探偵としての実績・素養”が備わっており、そのバックボーンがあって、主人公として作品が成立しているわけですが、本作の主人公・久能整はただの大学生です。

それなのに現役の刑事が舌を巻くほどの知識・洞察力・推理力を発揮して、事件を解決に導いていきます。

不可解ですよね?ただの大学生にしては凄すぎます。

ここで少し考察をさせていただきますと、単行本3巻時点では少しだけ伏線めいたものがあるものの、整の生い立ちについてはまだハッキリと描かれていません。筆者としては、彼の出生なり家族なり過去なりに何かあると睨んでおります。

整が饒舌に語る語る!

整の事件解決方法は実にシンプルで、整が置かれた状況や他の登場人物のセリフから得られた情報を元に、目の前で何が起きてもそうそう動じることなく、淡々としゃべって、しゃべって、しゃべりまくるのです。そして整がしゃべり倒した時、気づいたら事件が解決しているのです。

その話術は、決して苦し紛れの屁理屈や自己弁護の能書きといった類ではなく、不思議な説得力があり、長ゼリフであっても読んでいてダレることはなく、まるでポエムでも読んでいるかのように心地よくスラスラと読み進めていけます。

固定観念や既成概念にとらわれないセリフ

さて、ここまでこの記事を読んでくださった方には、本作は整がとにかくしゃべりまくる作品だということがお分かりいただけたかと思います。

そんな整のセリフの中に、読んでいてハッとさせられることが多々あります。ふとした会話を取っ掛かりにして物事の本質をズバーンと突いてくるのです。

仕事を辞めて専業主婦になって子育てをしている妻に対して夫が、「(働かないで養ってもらって)楽している」「子育てが女の幸せ」という発言に対して、整がネットでちらっと見た記事としてこんな話を始めます。

父親たちを集めてある実験をした。簡単な計算問題の紙を渡して1時間以内に解けと、しかし、その実験の主催者は数分おきに電話をかけたり話しかけたりして父親たちのジャマをする。父親たちはイライラし結局誰も時間内に問題を解くことができず、「こんなにジャマされたら何もできない」と怒り出す。そこで主催者が「これが子育てをする母親の毎日なんです」といい、簡単なことでも達成感を味わえないその苦しみに、父親たちは黙ります。

さらに整はこう付け加えます。

「“女の幸せ”という言葉を言い出したのはたぶんおじさんで、女の人から出た言葉ではなく、女性をある型にはめるために編み出された呪文だ」と。

このエピソードは世の既婚男性にとっては耳が痛く、目から鱗ではないでしょうか。

タイトルの翻訳、ミステリーだけじゃない

本作は少女漫画ですが、主人公と他の誰かとで三角関係だとかの恋愛要素は全くなく、読み応えのある良質なミステリー漫画となっており、さらに一風変わった主人公が不意に読者の虚を突いてくる+αが楽しめます。

少女漫画だから、と敬遠しがちな男性にも十分オススメできる作品です。