勇気を武器に、友と一緒に、目指せ世界一立派な王様!『王様ランキング』

勇気を武器に、友と一緒に、目指せ世界一立派な王様!『王様ランキング』

絵本と少年漫画の絶妙な融合

勇気を武器に、友と一緒に、目指せ世界一立派な王様!『王様ランキング』

皆様は、出会えて良かったと心から思える作品はありますか? 私はあります。それがこの「王様ランキング」です。 作者の十日草輔(とおかそうすけ)先生は無名の作家でした。 物語も、一言で言えば少年の冒険譚という、ありふれたものです。 しかしこの作品は多くの人の心を惹きつけ、さらには応援したいと思わせました。 どうしてこの作品が多くの人の心に響いたのか? どうして作者までもが愛されているのか? その謎の答えをこの作品の魅力と共に見ていきましょう。 読み終わるころには、皆様もファンになっているかもしれませんよ!

 

知れば知るほど好きになる、「王様ランキング」4つのポイント!

「王様ランキング」の面白さは一言では言い表せません。不思議なイラスト、少年の成長、キャラクターなど気になるポイントがいくつも出てきます。

中でも注目してほしいポイントを、4つに分けてご紹介させていただきます。読んだ事がある方も、これから読む方も、そのポイントに気を付けると読んだ際に、より「王様ランキング」が好きになるはずです。

是非とも好きになって、一緒に「王様ランキング」を盛り上げていきましょう。

この先は多少のネタバレを含みますのでその点はご容赦ください。それではまずはあらすじからご紹介させていただきます。

あらすじ

王様の強さ、国力、知名度、あらゆる条件を元に王様をランク付けする制度、それが「王様ランキング」。

主人公ボッジはボッス王国の第1王子としてこの世に生を受けた。彼の夢は世界一立派な王様になる事だった。
しかしボッスは耳が聞こえず、どれだけ努力しても子供用の短剣すら振れないほど非力・・・。それでも夢を諦めないボッスは、ある日初めての友達カゲと出会う。

この出会いから、ボッジの人生は大きく変化していくことになるのだった。

1 イラストとストーリーのギャップから生まれる面白さ!

まず「王様ランキング」を読んで最初に驚くのは、絵本のようなイラストと少年漫画のようなストーリー展開のギャップです。

表紙からも分かる通り「王様ランキング」は絵本のようなテイストで描かれています。実は主人公ボッジと友人カゲは、元々別作品の絵本のキャラクターでした。

十日先生は絵本で勝負をしようと思っていたらしいのですが、残念ながら絵本業界を取り巻く状況の厳しさから断念。
絵本作家を目指す前は漫画家を目指していたこともあり、漫画を描くようになりました。こうして、独特なタッチの主人公が活躍する土壌が生まれたのです。

そしてストーリーは、本来もっと少年漫画的なランキングを上げるために戦う話になる予定でした。しかし実際に話を作ろうとするととても不自然になってしまったそうです。

だから主人公に目的を持たせるために、世界一立派な王様を目指すという設定を残し、無理のないストーリー展開がなされるようになりました。

こうして絵本と少年漫画を絶妙なバランスで融合させた作品が出来上がったのです。

またボッジの夢である“世界一立派な王様”という目標は、一見分かりづらいものです。普通なら何をどうしたら世界一立派な王様なのか?となりますが、この世界にはランキングがあるためそこで1位をとればいいという、明快な目標になっています。その中でも王様の強さは重要視されているので、ボッジが強くなりたい理由づけになっています。

このように、ひとつひとつ見ていくと単純明快に、論理的に作られていることが分かります。

この世界には巨人や魔物、他にも一言では説明できない不思議な生き物や現象があふれています。しかしそれは、あくまでこの世界を構成する一要素にすぎません。

何かに頼らず、ないがしろにせず、世界を、人を、ありのままに描くからこそ「王様ランキング」は面白いのですね。

2 人生まで見えてくるキャラクターの厚み!

登場人物の描写は絵本では良い人は良い、悪い人は悪いとしっかり区別されることが多いです。少年漫画においてはもう少し複雑ですが、分かりやすく描写されることに変わりありません。

しかしこの作品は違います。

人物描写が精密で、どんな脇役にもしっかりとした人生があることが分かります。

例えば第2話でボッジの耳が聞こえないことを子供が馬鹿にする描写があるのですが、ここで子供は「喋れないなら喋れないって言えよ」と言います。

耳が聞こえないから喋れないのは当たり前だと、大人なら分かります。しかし幼い子供にはそれが分かりません。耳が聞こえないことと喋れないことが結びつかないからです。

また子供は自分達と違うものを排除しようとする防衛本能が、大人以上に強い。つまり、変わり者で喋れないボッジを馬鹿にする描写に繋がるわけです。

他の場面でも最初は嫌な人だと思っていたら、次には良い人に見えて、やっぱり嫌な人で、と二転三転することが多々あります。実生活でもそうですが、どちらか極端な人っていませんよね?

良い一面もあれば悪い一面もある人がほとんどだと思います。そう見えるのは性格であったり、目的の違いであったり、理由は様々です。その人間性を短い描写の中に余すところなく詰め込んでいるからこそ、登場人物が生きているように見えるのです。

ちなみに、私が一番好きなキャラクターはヒリング王妃です。彼女は最初、感情的で高圧的でとても嫌な人に見えました。しかし話が進むにつれ、とても愛情深く、行動にはきちんとした理由があることが分かるようになります。

他のキャラクターも同様で、一面を見ただけでは人は判断できないのだと教えてくれます。王国の重要人物はもれなく魅力的なので、期待して読んでください。

他にも好きなキャラクターやシーンが多すぎるのですが、中でもカゲの過去の回想は涙なしには見られません。知らないはずのカゲの半生を、まるで体験したかのような気持ちにさせられます。

知らなければ浅はかな思考の小悪人、しかしそれを知るだけで見方は全く変わってくるのです。

読んでいくうちにどのキャラクターにも人間としての厚みがあることが分かります。必ず好きなキャラクターに出会えますので、是非読んで体感してみてくださいね。

3 全てをまとめあげる圧倒的な漫画力!

絵柄、話作り、キャラクター描写、それに加えて場面の切り取りが圧倒的に優れています。

そもそもボッジは耳が聞こえないため喋れません。普通ならモノローグで語りますが、ボッジにはモノローグすらありません。

つまり読者も作中の人物もボッジが何を考えているか分からないのです。

だからこそボッジは、表情や身振り手振りで自分の考えや感情をしっかり伝えてくれます。ボッジの事をとても情緒豊かな人物だと認識できるのは、切り取り方と描写が優れているからなのです。

またカゲだけは、最初に出会った頃からボッジが何を喋っているのか理解します。その理由はカゲ本人にも分かりません。言葉が通じなかったボッジにとって、これがどれだけ嬉しいことだったか、カゲが特別な存在なのもうなずけますね。

それに唯一ボッジが名前を呼んだ相手がカゲなんです。「あーえ、あええ」は私でも何を言っているのか分かるくらい、喜びに満ちあふれていました。

他にも、誰かを見つめるボッジには様々な感情があります。憧れ、嫉妬、悔しさ、愛情、喜び、感謝、それをたった1コマで表現しているのです。

これは昭和の漫画で良く見られるのですが、感情をオーバーに描くことで何を考えているのかをより分かりやすくする手法です。最近はあまり使われなくなったため、逆に新鮮に、印象的に見えますね。

十日先生は藤子・F・不二雄先生の大ファンで、漫画を描くにあたり影響を受けているとインタビューで仰っていました。しかしそれをきちんと自分の中に取り入れてオリジナルに昇華しているからこそ、人の心を動かしているのだと思います。

伝えたいものをきちんと伝える、そのために必要な場面の取捨選択ができる。そして選択した最高の場面をまとめあげ、1つの作品へと昇華させる。

当たり前だからこそ難しい、それをきちんとこなしているから「王様ランキング」は面白いのですね。

4 応援したくなる、十日草輔先生の魅力!

作品が魅力的なのは十日先生が魅力的だからだと私は考えています。

そもそも十日先生は脱サラして漫画を描き始めた人です。元々漫画家や絵本作家を目指していたのですが、諸般の事情により断念。そこから約20年、サラリーマンをしていました。

ある、20年前に会った編集者さんに言われた言葉を思い出し、再度絵本に挑戦。試行錯誤の末、現在の形に落ち着きました。

20年で磨かれた人間力、夢を追いかける精神力、思い立ったら即行動の決断力、十日先生ご本人を漫画化したら面白い少年漫画になりそうです。

さらに十日先生の凄いところは、あらゆる知識や技術を取り入れる柔軟性にあります。読者の声や編集者のアドバイス、他作品の面白さも自分のものにしています。だからこそ日々作品が進化していくのでしょうね。

他にもインタビューや公式Twitterなどで、十日先生の人間性が分かります。ボッジのように夢を諦めず、応援したくなる人です。コメントや応援に一喜一憂する可愛い一面もありますので、一度覗かれてみてはいかがでしょうか?

勇気の意味を教えてくれる「王様ランキング」

ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

「王様ランキング」の魅力は数多くあります。受ける印象も人それぞれ違うでしょう。でも、読んだ人に勇気とは何かを伝えてくれる、これだけは揺るぎません。

誰かを守るために敵に立ち向かう。笑われても自分を信じて行動する。他人を信じる。耳が聞こえなくても、剣が持てないほど非力でも、夢を諦めない。

勇気の教科書と言っても過言ではない「王様ランキング」はマンガハック、ニコニコ静画、マンガボックスインディーズで好評連載中です。2019年4月に3巻が発売されますので、今からでも十分追いつけます。

ボッジと一緒に冒険の旅に出かけましょう。

人間って面白い、人生って楽しい、少しの勇気で世界が変わる、色々なことに気づかせてくれる作品です。

異端にして王道の少年漫画「王様ランキング」、是非読んでくださいね!