『あさきゆめみし』

『あさきゆめみし』

2018/10/13 更新

センター試験の古文に役立つ!

『あさきゆめみし』

古文を勉強していてもイメージが浮かばない…と困ってしまう方もいるのではないでしょうか。 この記事では、マンガで古文を勉強してみたい方に「あさきゆめみし」がどう役立つかをまとめました。 また、「あさきゆめみし」のことをもっと深く知りたい方向けに、原作の源氏物語と「あさきゆめみし」とを比較解説しています。

 

ビジュアル化! 平安時代の貴族のくらし

古文を読みながら、頭の中に登場人物や場面をイメージできるでしょうか?
直衣(のうし)、御簾(みす)、几帳(きちょう)、格子(こうし)など、古文単語の中でも古文常識と言われている単語がいくつかあります。文字だけではなかなかイメージしづらいところです。

古文に触れる前にマンガを読んでおくと、当時の貴族が着ていたものや家具・部屋のようすがイメージできるようになります。

古文初心者には「超訳百人一首 うた恋い。」もおすすめ!

「あさきゆめみし」と同じように古文の世界を舞台にしたマンガに「超訳百人一首 うた恋い。」がありますね。「あさきゆめみし」に比べて、とっつきやすいのは「うた恋い。」でしょう。

本当に古文の初心者なら「うた恋い。」もおすすめです。ただ、「うた恋い。」にはわかりやすくするために実際の貴族の服装や生活にあまり忠実でない部分があります。

わかりやすい・とっつきやすいということは初心者にとって、とても大切なことです。「あさきゆめみし」は生徒さんに薦めていますが、読み始めた生徒さんの半数が挫折します。まず「うた恋い。」で古文への苦手意識を克服して、「あさきゆめみし」でより深く学ぶというステップをおすすめします。

「うた恋い。」と「あさきゆめみし」を読んでおけば、古文常識のベースが身につきますよ。

文法から解説! ていねいで忠実に訳されたセリフ

ここでは高校1年生レベルの古典文法のお話をします。

ある日光源氏は、垣根越しにまだ幼い紫の上が泣いているのをみかけます。そのシーンで紫の上が発する有名なセリフがあります。

「すずめの子をいぬきが逃がしつる。伏籠の中に籠めたりつるものを」

「あさきゆめみし」では以下のようになっています。

「すずめの子をいぬきが逃がしてしまったの。伏せ籠にいれてあったのに」

「逃がしつる」の「つる」は完了の助動詞「つ」の連体形です。
訳は「~してしまった」。
「籠めたりつるものを」の「ものを」は逆接の助詞。
訳は「~であるのに」。
「あさきゆめみし」では「つる」「ものを」がちゃんと訳されています。

もちろん「あさきゆめみし」では、セリフが付け加えられたり削られたりしています。しかし、原作にもともとあったセリフはかなり忠実に訳してあるようです。

原作と違うところもいくつか紹介!

源氏物語では、桐壷の更衣(光源氏の母親)が桐壷帝(光源氏の父親)の寵愛を受けているところから物語が始まります。「あさきゆめみし」では二人のなれそめや愛が深まっていくエピソードが付け加えられています。

原作ではむしろ桐壷の更衣を失った後、残された人たちの悲しみが情緒豊かにつづられているのと対照的です。これは、紫式部が長恨歌(ちょうごんか)を意識していたからだと言われています。

原作と読み比べてみると、「あさきゆめみし」は巻が進むほど源氏物語原文に忠実になっていく傾向があるようです。

原作の女三ノ宮は「あさきゆめみし」と全然違う!?

もう一つ、「あさきゆめみし」で大きく変えられている点として、女三ノ宮(にょさんのみや)のキャラクターがあげられるでしょう。女三ノ宮は光源氏の正妻でありながら、柏木(かしわぎ)と浮気をして薫(かおる)を産む女性です。

原作の女三ノ宮は、子どもらしく無邪気でか弱い姫君で、光源氏を愛し慕っています。たとえば、夕方になって紫の上のもとへ帰ろうとする光源氏を、女三ノ宮がかわいらしく引きとめるシーン。

「月待ちて、とも言ふなるものを」と、いと若やかなるさましてのたまふは、憎からずかし。
(「月を待って、と言うそうですから」と、たいそう子どもっぽい様子でおっしゃるのが情愛があって感じがよい)

月が明るく帰り道を照らしてくれる時間までもう少しでいいからここにいてください、と言って引きとめたんですね。子どもっぽくていろいろとつたないところもあるけれど、かわいらしくていじらしいキャラクターです。

しかし「あさきゆめみし」の女三ノ宮は、こころのない人形のように誰も愛すことのできない女性として描かれています。登場人物の中で、一番原作とのギャップが大きいキャラクターではないかと思います。

ほかにも原作と違っているところは、たくさんあります。
比較してみると、いろいろ発見があっておもしろいですよ。

まとめ

今回は「あさきゆめみし」の魅力についてまとめました。
「あさきゆめみし」は知れば知るほど「よくここまで調べたな! 原文の美しさをよくここまで表現したな!」と感心する描写だらけです。

「あさきゆめみし」は、古文初心者の方にとってとてもわかりやすい参考資料になるでしょう。古文上級者の方には、ぜひ原文や他の現代語訳源氏物語と読み比べて楽しんでいただきたい作品です。

「あさきゆめみし」をもっと楽しむきっかけにしていただければと思います。

―参考サイト―
源氏物語の世界 再編集版