『響~小説家になる方法~』

『響~小説家になる方法~』

2018/10/26 更新

全ての常識を覆す問題作にして大ヒット

『響~小説家になる方法~』

質の良い作品を世に出したいという出版各社の熱意は今も昔も変わらない。だが出版不況といわれて久しいように、とにかく本が売れない。この状況を打破するためには「小説の力で、世界を変えられる」作家が必要だと考える、編集者の花井。ある日、編集部に送られてきたものの募集要項を満たしていないため捨てられた、新人賞の原稿を読んだ花井は確信する。この作品が受賞し「時代の分かれ目」になる、と。作者の名前は、鮎喰響―。今回ご紹介するのは、「響~小説家になる方法~」です。

 

「鮎喰 響」15歳

一見普通の、本が好きな女子高生という印象の響。敏腕美人編集長の花井から「小説は好き?」と聞かれると「・・・大好き。」とほほを染めながら言う姿はまるで可憐な少女のようだ。

「読むのも書くのも好き。心に直接触れてるみたいで・・・。」と照れながら表現する例えは、繊細かつまるで虫一匹殺せそうにない優しい雰囲気さえ感じさせるほど。しかし、響が話せば話すほど、この子は普通じゃない。そう確信することになる。

最強にして最恐女子高生「響」

彼女は「恐れ」と言うものを知らない。自分よりも確実に力が強いはずの、逆らえないような暴力的な不良にも、少しも屈せずひるまずに言い返すシーンには度肝を抜かす。それが大人であろうが、地位あるお偉い人間だろうが、筋の通っていないことをする人間には特に、言葉よりも先に手が出てしまうというのが玉に瑕である。

超凶暴な一面あり。ただでさえ自分の中の芯を貫いている性格のため、普段から考えを一切曲げることがない響だが、一度暴れだしたらより誰にも制御できない。それゆえに、響の側にいる幼なじみの涼太郎や、響の才能に一早く気づき、響を小説家の道へ導いた敏腕編集者花井はいつも振り回されることとなる。

素手で殴る,蹴り飛ばす、周囲にある物を人に投げつけようとするシーンは、悪役プロレスラーも真っ青である。それが頭に血がのぼっての行動ではなく、涼しい顔をしながらあくまでそうすることが普通であるかのように、全く躊躇なく行動に移す響には、人間の血が一滴もかよっていないような恐ろしささえ感じる。

冷酷な化け物

そんな自分の強い信念を持ち、とびぬけた才能をもつ「天才」は、凡人から見たらまさに「化け物」。圧倒的なセンスに、抜群の文章力で、何年もこの瞬間にかけてきたという努力の人間たちに、無意識に酷な一言や態度を取ってしまうこともある。

過去に超有名な作品を生み出したが、今はもうそれを超える作品を書くことができない、そんなある種燃え尽きた作家に対し、「なんで生きているの?」と本当に心の底からそう思ったのだろう響が聞くシーンは、一種の殺人事件を目の前で見たような、体が凍り付くほどに恐ろしく、完全に相手の息の根を止めたようなセリフに感じた。

響の魅力

響がすごいのは、見ている現実の読者さえも強引に漫画の中に引きずり込んでしまうような、不思議な惹きつけるパワーを持っているところ。最初から驚くことばかりする響だが、気づけばずっと驚いている自分がいることに驚く。それほどに響はいつも理解することが難しいほど、凡人にはあり得ない行動ばかりを取っているのだ。

今までこんなに度肝を抜かされ続け、読むたびに衝撃が走る漫画を見たことがない。
こんなにヒロインが誰かを立ち直れないほどに傷つけるのを見たことがない。
こんなに天才で凶暴で、非常識で、マナーのマの字もないような、人格さえも疑ってしまうような言動をしてしまう主人公を見たことがない。

自分の心に正直で誠実

そんな誰からも愛されづらいような印象を与えがちな響だが、自分が好きだと思う小説家に対しての接し方は信じられないほどにとても柔らかく、そして心から尊敬しているというような表情や雰囲気さえ醸し出し、今まで見てきた響は誰だったのだろう?と思わせるほど、別人のように見える。

その一点の曇りもないほど、それはそれは澄んだ綺麗な目で相手の目を真っすぐに見すえながら、尊敬する作家全員の名前を呼ぶシーンはとても印象的である。目上の人間ばかりの作家たちの名前にさんをつけることなく呼んでいるにも関わらず、なぜかその呼び方でいかに尊敬しているか、いかに自分があなたの小説が好きかと伝えているその姿で、響がとても美しい人間に見えるから本当に不思議である。

響という人間を知れば知るほど、その時その時に見せてくれる表情が全く違い、何人も違う同姓同名の響が存在するかのような、とても一言では説明しがたい性質の持ち主であることは間違いない。

悪魔のようなヒロイン

一度暴れると誰も手に負えない、自分の感じたことをそのまま言葉にしてしまうからこそ、人一倍誰かを傷つけてしまう、主人公とは思えないような悪魔のようなヒロインだが、時に驚くほど可愛らしい仕草をするのも嘘偽りない響の姿である。

どこにも隙などなく、鉄壁という二文字がまさに当てはまることが多いのに、ふてくされる時もあれば、夏祭りで浴衣をリカに着せてもらったりして女の子らしく着飾る時もある。気を許した相手の前ではあどけない表情をしたり、少し前まで中学生だった少女の片鱗さえ見える。

どれもこれも響という一人の人間なのだが、人よりも秀でた隠しきれない才能と、人一倍強い信念、ぶれない強い意志が彼女を固くコーティングしているからこそ、もっと響のことを知りたいと思うに違いない。そして彼女の新たな魅力を発見をするたびに、嬉しくなるのは、きっと響というキャラクターに知らないうちに惹きつけられて夢中になっている証拠なのだ。